大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和27年(う)34号 判決

按ずるに本件に於ては被告人等が夫々原判示の手段方法を以て原判示のように石川県羽咋郡羽咋町所在株式会社北国銀行石川県羽咋支金庫より原判示の各金員を引出したこと及該金員が総て原判示の羽咋土木出張所勤務の同出張所臨時事務員、自動車運転手等に対する通勤用列車定期パス代金又は同出張所が新聞、雑誌等に掲載した広告料金、同出張所の通信料金に充当支払れたものであることは争いのないところである。

被告人等の本件叙上の所為が果して起訴状に訴因として指摘せられたように業務上横領罪若くは詐欺罪を横成するか否かにつき原判決はこれを詐欺罪と認定し該当法条を適用し被告人等を処断したものであるが原審に顕れた本件各証拠を検討するに先づ原審証人藤沢進の供述に依れば人夫賃、新聞広告費は何れも予算上「節」に属して相互に流用を許されるものであること、人夫の雇用、其の賃金の決定が出張所長たる被告人森谷に其の権限のあることが認められ原審証人臼井利三郎、樋爪淳、勝二幸作、辻口祐治、橋場良一、大島義久、勝二博、西正雄、大田英治等の供述に依れば本件の所謂臨時事務員等は何れも人夫名義を以て雇用したものであつて本件パス代金は同人等に支給する給与の一部を為すものであることが認められる。即ち本件金員の中定期パス代金に費された部分は所長の権限内に於ける職員に対する正当な給与に流用せられたものであるからこれに対し被告人等或は第三者のための不正領得の観念を挾む余地がない。又本件新聞広告は被告人等個人に関するものではなく公務所である羽咋土木出張所として通例許容せられている広告であり通信料も亦同土木出張所の管掌事務遂行上必要なものであつて前示証人藤沢進及原審証人斎藤彌紋、谷嶋重治の供述に徴すれば人夫賃を予算上認められた広告料金については勿論これを超えた広告料又は通信費に流用することは一般的に認容せられていたものであることが明瞭であるから本件金員中これ等に充てられたものについても亦前同様不正領得の意思を以てのぞむことはできない。尤も石川県羽咋支金庫係員が本件支払通知書中架空の人夫賃を包含し又虚偽の人夫賃に関する支払通知書であることを知らずして本件各通知書に基く金員を支出したものであることは明かであるけれども本件の金員は県の予算金でありこれを前叙のように許容された権限の範囲内に於ける行政上必要な使途に流用の目的にて引出し其の目的の通り使用したものであるから本件につき訴因指摘の業務上横領又は詐欺罪を以て律することは失当であると謂わねばならない。結局本件に於ては公訴事実の訴因たる業務上横領又は詐欺罪を横成する事実を認め得られないから爾余の点に関する論旨の判断を省略し原判決を破棄して当裁判所は刑事訴訟法第四百条但書第三百三十六条に則り主文の通り判決する。

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